カジャラ

公演箇所が格段に増えた「カジャラ#4」。それまでの遠征が大阪止まりだったこともあり、西日本・東北・北海道在住のファンが狂喜乱舞。 公演数もかなり増えたが、チケット争奪戦は相変わらず熾烈を極めた。

カジャラシリーズは、KKPやポツネンなど他の小林賢太郎作品同様、フライヤーがとてもカッコいい。 作品の世界観を見事に表現した魅力的なフライヤー達は、会場で観劇する際「おみやげ」的な意味合いで配られる特別なもの。 プロモーションとしてではないその位置付けも素敵だと思う。

中でも私は「怪獣たちの宴」のフライヤーに強く惹きつけられる。その先にある「アレ」に心を奪われるから。 漠然とした「アレ」へ感じる底知れない不気味さと、それと相反するワクワクで満ちた高揚感。表裏一体のそれは、私の中に常に在る。


■出演:なだぎ武/竹井亮介/小林健一/加藤啓/辻本耕志/小林賢太郎
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■演目:カジャラさん/焼肉屋/在宅超人スウェットマン/フランケン/お父様!?/ポセイドン/二宮金次郎/アメリカン兄弟/地球よ/ニンゲン/プレゼンテーション/メキシカン漫談/怪獣たちの宴


横浜公演  2019/02/20〜02/24 KAAT 神奈川芸術劇場
広島公演  2019/02/28〜03/01 JMSアステールプラザ
福島公演  2019/03/06 けんしん郡山文化センター
北海道公演 2019/03/09〜03/10 かでるホール
金沢公演  2019/03/15 金沢市文化ホール
大阪公演  2019/03/19〜02/24 サンケイホールブリーゼ
静岡公演  2019/03/26 グランシップ中ホール
福岡公演  2019/03/29〜03/30 北九州芸術劇場
東京公演  2019/04/02〜04/14 世田谷パブリックシアター
豊橋公演  2019/04/16〜04/17 穂の国とよはし芸術劇場PLAT




カジャラ公演の中では観劇の記憶が一番新しい「怪獣たちの宴」
せっかくなので、全コントについての感想と思い出を残しておこうと思う。

《カジャラさん》
まずこの「カジャラさん」に入るまでのオープニング。 演者が立ち位置に着くまでの一連の動きがとても好きだった。特に賢太郎さんの「一瞬時が止まってまた動き出す」そのスローモーションに入る瞬間と通常のスピードに戻るタイミング。 まるで空間全体を支配しているみたいでゾクゾクした。

そして健一さんがうやうやしく捧げ持つ球は何かの象徴か?と思ったら・・・の緩急が凄くイイ。
関西カジャラさんは、辻本さんの歌になだぎさんがスッと入っていくところがわけもなく面白くて、見る度に「上手いなあ」と思う。 ご当地「カジャラさん」はどれも本当にありそうで時々口ずさんでしまう。自分の地域の歌詞も欲しくていくつか作ってみた。 多分、コントで登場しなかった地域の人達は同じことやってるんじゃないかな。全国、津々浦々の「カジャラさん」を聞いてみたい。 そして「じゃんけん」シーンが最高な、このコントの構成がとても好き。

《焼肉屋》
好きなんだ、これ。そして6人だからこそバランスがいいんだよな、とも思った。 このコントを見て以来、うちの冷蔵庫には常にパック売りの「もずく酢」がある。 次のコントへの幕間で黒子の山下さんが「あちちっ」の演技をしていたのも印象深い。 北九州公演でのこと、カルベさんの火渡りのシーンで客席から自然と手拍子が起きて、会場が一つになったことにも感動した。

《在宅超人スウェットマン》
啓さんって、めちゃくちゃ「ヒーロー声」だなって、カジャラジオのジングルの時にも思ったのだけど、カジャラ#4 は、啓さんの独特のセリフ回しと特徴的なその声に一気に魅了された公演だった。「プレゼンテーション」での喋り方なんて最高に好き。
この「在宅超人スウェットマン」はデリケートな問題を扱った作品でもあるけど、そこにある希望を感じ取れたのがとても良かった。 そして誰の中にも実は、彼によく似た「何者か」が潜んでいることを提示されたようにも思えた。

《フランケン》
最初に見た時と最後ら辺ではかなりセリフや動きが変わっていたコント。 健一さんのフランケンがめちゃくちゃ似合っていて、凄く説得力があったのも素敵だった。

《お父様!?》
これは何?吉本新喜劇?ってくらいに、過去にない空気感で飛ばしまくっていたコント。笑ったぁ〜。こんなのもありなんだって正直、最初はびっくりした。 あー楽しかった。なだぎさんの身体能力の高さにも度肝を抜かれたコント。

《ポセイドン》
大好きなんだ、これ。会場によって機材の関係とかあるのかもしれないのだけど、北九州市芸術劇場のポセイドン様の声の響が最高だった。 この作品も途中でセリフが変わったことで、面白さがより伝わりやすくなった印象がある。
カジャラ#4については、横浜、大阪、北九州、豊橋の4ヶ所で観ることができたのだけれど、どこもそれぞれに好きだった。 違う時期の公演を観ることができると、この作品のように進化の過程を目の当たりにできるのがたまらなく嬉しい。

《二宮金次郎》
巷では「二宮金次郎像」が学校から撤去されるニュースで持ちきりだった当時。 すぐさまそれをコントに落とし込む賢太郎さんも凄いし、それを演じた辻本さんも強烈なインパクトを残してくれた。 笑ったぁ〜。「二宮金次郎」も回を重ねるごとにどんどん素敵に進化したコントだけど、そのきっかけってやっぱり客席の反応とか、終演後のアンケートなのかしら。 特に素敵に変わっていたのが、台座に上がるシーン。最初の頃は唐突だったその行動にそこに至るプロセスが加わって、とても強いシーンになったなあと感じた。

アンケートと言えば、私はいつも気づくと会場を出るのが最後ってくらいに時間いっぱいまで、表裏びっしりと書かずにはいられなかった。 どんなに拙い言葉だとしても、何とかして「この感動を伝えたい」その思いにかられて。
でもそれらは観劇直後に限られた時間内で書くものだということもあり、全く整理されていない感情がダダ漏れでとりとめもない内容。 会場を後にしてから気づくこともたくさんあって、よく書き直したい!と思ったものだ。 前日書いた内容があまりにもダメダメだったと思った時には、翌日のアンケートに別紙を添付したことさえある。何やってるんだろう私。
別紙はあんまりだと思い、その後は「ファンレター」というちょっとだけ響きが素敵なものへと切り替えた。公演ごとにプレゼントBOXへ投入。 あれらが今でも「スタジオコンテナ」に保管されているかもしれないと思うと・・・、お恥ずかしい。

《アメリカン兄弟》
これ、多分だけど、横浜公演の間とか空気感が、賢太郎さんが本来意図していたものだったのでは? 少なくとも私はそう感じた。どんどん変わったよね。変わり過ぎてびっくりしたよね。でもそれもまた面白かったよね。アドリブもあったけど 脚本も設定も概ね同じなのに、こんなにテイストが変わるんだとその変化も実は面白かった。
作品をどう見せたいのか、何をどんな風に伝えたいのか、その作品の要の部分を握っているのは脚本・演出の賢太郎さんだ。 演出家としてこのコントと向き合う日々の中で、どんな心境の変化があったんだろうと俄然、興味が湧いた。 どの回も疲れるくらい笑ったし泣いた。なんて幸せな時間だろうと思った。三田村さんという名前を見ると今でも気分がアガる。

《地球よ》
そうそう、それ私も凄く思う。という内容が詰まったコント。共感の嵐だった。 毎回、健一さんの身が心配になってしまったのだけれど、あれもきっと「転ぶ技術」なんだろうな。

《ニンゲン》
健一さんの魅力炸裂の痛快コント。楽しかった。
小道具をたくさん使う「地球よ」と「プレゼンテーション」の幕間をどうするか悩んだのがきっかけで生まれたコントらしい。 こういう裏話って面白いから、これからもどんどん聞かせて欲しい。
これ言うの反則なのかなあ?私はちょっとだけ「ノス」を思い出す瞬間があった。

《プレゼンテーション》
強烈に刺さった。「あったことはなかったことにはならない」がズシンと来た。
北九州公演でのこと。賢太郎さんがその日は「眼鏡なし」で登場。なだぎさんも眼鏡なし。衣装プラン変更か、このパターンも好きだなと思っていたら、 単に賢太郎さんが眼鏡をつけ忘れただけだったらしい。ステージに立つ賢太郎さんを見て咄嗟に「なし」で登場したなだぎさん、さすが。

《メキシカン漫談》
こんなことがホントにあったらキッツイなあ〜実はあったのかな、ここまで極端じゃないけど何かの手違いとか。ふふ。 演者の皆さんが子供の頃に好きだったお笑い番組のコントを大人になった今演じている・・・みたいな空気感もあり、皆さんとても楽しそうだった。

《怪獣たちの宴》
観る度に見える景色が違い底知れない深さを感じる。強烈に心に残る大好きな作品。
「アレ」が何かも、世界観も、私自身の立ち位置も、何もかもがその時々でいかようにも変わる。 「アレ」は観る人の数だけ存在し、それぞれが違う姿をしているのだろうなと思った。

賢太郎さんの演技も観るたびに違っていたのが何より印象的に残っている。 そこにはいつも、私が初めて出会う「初めてアレと対峙した小林少年」がいたんだろうなと思った。 だから私にも都度、その日の小林少年が見た景色が見えていたのだ、多分。

このコントには、演者それぞれの見せ場がふんだんに用意されていて、各々の個性が炸裂しているのがまた楽しかった。 演劇でもコントでも、それは演者さんが演じている役なんだとわかっていても、ついつい感情移入してしまうものだ。 中でも「カルチャー兄貴」のくだりでは、笑いながらも切なかった。 こんなにキラキラした目で話を聞いている小林少年も、いつかはスエットマンのところへ通わなくなるんだろうなあって。

カマキリのおっちゃんも強烈だったし、黒子のご挨拶からのまさかの伏線回収も斬新だった。 演出も小道具の使い方も盛りだくさんで楽しかったし、音も照明も圧巻のカッコ良さだった。




改めて思う。この公演そのものが「男子自由形」だよね。




2022/12/01

大人たるもの裸の王様働けど働けど怪獣たちの宴無関心の旅人カジャラジオ