採集〜2人の主役の物語〜

第12回公演:ATOM 採集




「・・・みたいな、なー!」

ってならないかな、これ。
「超能力」の時の底抜けに明るいあのノリで。
ドッキリからの大爆笑なオチ求む・・・みたいな・・・なー!

何もかも知ってるのに見る度に鳥肌が立ってしまうの、なんでだろう。
しかも、見ても見ても繰り返し見たくなってしまう。この中毒性の高さ、なんでだろう。


さて・・・、
ここからは「採集」体験がまだな方には、絶対に先にコントを観てから読んでいただきたい部分。





「採集〜2人の主役の物語〜」と今回のタイトルにもしたのだけれど、 わざわざ思い出話として昆虫500種類つがいの話題を出したのだから、プリマとマドンナがジャックによって 採集されるつがいと考えるのが妥当だろうし「プリマドンナ=主役」という意味でも2人がこのコントの主役。

その場にいない「マドンナ」の存在感は、今更ながら衝撃だ。


「中身には興味がない=外見の美しさは最重要事項」のジャックにとって、美の女神マドンナとその隣に並ぶに相応しい容貌のプリマは、 どんな手を使ってでも欲しかったモノ。決して手を出してはいけない「人間」だからこそなお、それは究極の存在。

ジャックのプリマへの想いは友情などではない。出会った頃からずっと、彼は「この日のため」だけにプリマの側にいたのだと思う。半ば本能的に。


「切り裂きジャック」は1888年にイギリスで連続発生した、猟奇殺人事件およびその犯人の通称。正体は現在まで繰り返し論議がなされているにもかかわらず、1世紀以上経った現在も犯人は不明。
切り裂きジャックとの異名を持つ生物教師の犯行は「永遠に闇の中」という暗示もあるのだろう。
プリ「マ」と「マ」ドンナ2人は「魔=ジャック」を仲立ちとして「つがい」のようにペアになる。


それにしても・・・と思う。
彼女と一緒に暮らすプリマの幸せな東京生活は、おそらくジャックが電話口で言ったであろう たった一言「マドンナがお前に会いたがってる」で、一瞬にして揺らいでしまったんだなあ。キツいなあ。

仮に数年後、ことが発覚し刑が執行されることになったとしても、ジャックは後悔しない。申し訳ないとさえ思わない。 なぜならプリマもマドンナも「何ものにも代え難い大切な存在」ではあるけれど、それは友ではなく「コレクション」のひとつだから。


演出面では音響がとても好きだ。シンとした夜の体育館で響く声や音が、リアリティを増幅する。 観客の体験や感覚の記憶が音や照明に誘導され、その人独自の「夜の体育館」が出来上がる。
理科室ではなく、解剖にはおよそ似つかわしくない体育館という設定もとてもいい。賢太郎さんは どこの体育館をイメージしたのだろう。やっぱり自分の卒業校がモデルなのかな。



それは「人がモノへと化す寸前」までを、はからずも覗き見てしまった背徳感。笑って笑って笑い倒した後に襲い来る戦慄。 一度でも見てしまったら忘れられない中毒性。全身の細胞が総動員され使い切られたような憔悴。 心身ともに消耗することはわかっているのに、繰り返しその世界観に呑み込まれたくなるのが、ラーメンズ:採集。

暗転で観客は恐怖の闇へと引きずり込まれる。少し経ち、次に明かりがつくとそこはもう別世界。富樫くんとノスのほのぼのストーリー「アトムより」がスタートする。 採集で憔悴しきった心と身体が徐々に潤いを取り戻し、最後には幸せで暖かな気持ちで満たされる。 ATOM公演は各コントだけでなく、公演全体の構成も大好きだ。


▶︎ ATOM DVD




2022/12/01

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