第9回公演:鯨
本公演第9回
2001/06/01~07/08
カテゴリー:本公演
誰が最初に呼び始めたんだろう「きよぶき」と。
他にも「銀河鉄道の夜のような夜」を「夜のような夜」、「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」を「ポツ日々」という具合に、長い作品タイトルは短縮され愛称化される傾向にあり、その呼び方も作品と共に愛されている。
第9回公演:鯨 器用で不器用な男と不器用で器用な男の話
第09回公演「鯨」と言えば「器用で不器用な男と不器用で器用な男」と答えたくなるほど、私はこのコントが大好きだ。
切なくて驚くほど美しい、喜劇と悲劇の境界線にあるような名場面てんこ盛りのコント。笑いながらも泣きそうになる。
他の作品についてもそうなのだけれど、YouTubeに上がっているラーメンズ作品は、コントひとつひとつが単発でアップされているので
その部分だけが切り取られたような形になっている。でも実際にはコントとコントの「幕間」もとても大切で「きよぶき」は特にその要素が大きい。
何故なら「アカミー賞」と「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」の間には、青弦さんのチェロ生演奏(バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番プレリュード)がある。
幕間というより、本来は「きよぶきの一部」というべきものなのだけれど、YouTubeではそれを見ることは出来ない。
機会があるならDVDで是非、全編通しでこの公演並びにこの作品をご覧いただけたらと思う。
この作品はラストに至るまでの二人のやり取りの妙が、これでもかというくらいに刺さるのだけど、
何と言っても開け放った大きな窓の外へ、小林青年がトイレットペーパーを投げ捨ててからの演出が、この上なく美しくて印象的だ。
切なくて、やりきれなくて、それでも生きて行かなければならなくて。
そんなやり場のない崖っぷちの状態は、ともすると喜劇にすら見えてしまう残酷さをもはらんでいる。
まるで人生の縮図のようなシーンに息が詰まり、バッハの無伴奏チェロ組曲がそれをさらに盛り上げる。
チェロの音が響き渡るのもたまらなくいい。見る度に心を鷲掴みにされる。
それにしても、どうしてトイレットペーパーを使おうなんて思いつくんだろう?
しかもそれが忘れられない名場面として、こうして心に刻み込まれているということにも感動せずにはいられない。
2022/12/01
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